日常非日常

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140831 日本を憎むことが、「共産党擁護」へ走らせる 1 

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甥が去った後、甥の発した言葉を一つずつ吟味しながら、考えにふけっていた。
甥の言うことは、全部本心からの言葉であろう。


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十数年前、私たちの世代は青春のすべてをかけて、そして多くの仲間たちはまさに命をかけて奮闘した。
あの民主化運動は、甥の世代になると、もはや過去のこととして忘れられている。
否、忘れられているというより、むしろ鎮圧すべき「悪いこと」として認識するに至っている。
甥の言う「外国勢力の陰謀」とは、もちろん、共産党政権が自らの「血の鎮圧」を正当化するための捏造、宣伝にすぎない。
しかし甥はそのまま鵜呑みにして信じている。
そのために彼は、戦車を出動させて丸腰の学生(彼と同じ年齢の青年も多かったが)を惨殺した共産党政権のやり方に対し、少しの疑問も感じていないようだ。
全面的に擁護しているのだ。
そして彼自身も、喜んでこの党に入りたがっている。


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天安門事件を正当化し、共産党の犯した殺人を擁護する反面、彼はそれよりも遥か昔に起きた南京での「大虐殺」や、日本人による「数千万人の中国人殺し」といった過去の出来事を、あたかも目の前にある現実であるかのように強く意識している。
だから彼は現在の日本に対して強い嫌悪感を抱き、「日本が再び中国を侵略してくる」という荒唐無稽な作り話を完全に信じていて、大真面目に受け止めている。
それを防ぐために、彼は「共産党の指導」を心から擁護しているのだ。
自分自身も、身を挺して「戦う」つもりなのだ。


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それが、甥との会話を解析して私が到達した認識——彼という青年の考え方の枠組みである。
そして、その枠組みの中心点に何があるかといえば、それは明らかに「日本」であり、それがキーワードなのである。




石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140829 おじさんたちは間違っていた 2 

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彼の言う「党と政府の正しい措置」とは、言うまでもなく、民主化を求める学生たちに対する鎮圧を指している。
そう言われると、私も堪忍袋の緒が切れた。
「正しかった? 丸腰の学生たちを虐殺して一体どこが正しかったのか。政府が罪のない人を銃殺するのは正しいというのか、君は」と、私は声を荒げた。

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しかし甥は一歩も譲らなかった。
「そうだ。正しかった。おじさんたちのやっていたことは、外国勢力の陰謀じゃないか。鎮圧しないと、この中国は外国勢力の支配下に入ってしまうじゃないか。鎮圧して、どこが悪いのだ」
甥が薄ら笑いを浮かべながら、挑発的な目付きで私を見ている。
私は絶句した。
怒り心頭に発した。
すぐにでも立ち上がって、こいつの顔に平手打ちを食らわそうとするところだった。

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しかし、最後の理性が働いた。
相手は甥で、私は叔父だ。
ここは私の家だと、自分に言い聞かせながら我慢していた。
そうすると、甥が突如立ち上がってドアへ向かって歩き出した。
ドアの前にさしかかると、また急に立ち止まって私の方を振り向いた。
「殺人といえばね、おじさんの居るところ、日本人こそ殺人者じゃないか。南京大虐殺をやったじゃないか、何千万人の中国人を殺したじゃないか。おじさんはもう忘れたようだが、僕は忘れませんよ」と言い捨てて、そのまま出て行った。

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これが、私と甥との間で交わされた、忘れ難い対話の一部始終である。
私は今でも、彼の言葉の一つ一つ、表情の一つ一つをはっきりと覚えている。
私にとって、あまりにも衝撃的な出来事であった。




石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140826 おじさんたちは間違っていた 1 

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そのナゾがやっと解けたのは、2000年8月に、夏休みを利用して四川省の実家に帰省した時のことである。
大学1年生の甥が遊びにきた。
甥は私を見つめてこう言った。
「おじさん、もし、今度日本がもう一度中国に侵略してきたら、おじさんはどうする。帰ってくるの?」
自分の甥から、そんなとんでもないことを聞かされると、もはや苦笑するしかない。
あまりにもばかばかしいので、まともに答える気もしなかった。


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冗談半分で、こう聞き返した。
「じゃ、日本が攻めてきたら、お前はどうするんだ?」
そうすると、甥は座ったまま背筋をまっすぐに伸ばして目を輝かせながら、こう宣言した。
「僕は戦う。最前線へ行く。小日本を徹底的にやっつけるのだ」と。
「実は僕、大学で入党申請書を出した。来年には党に入れるよ」
「そうか、お前は共産党が好きなのか」


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「当然だろう。中国人なら皆、中国共産党が好きじゃないか。党を擁護しているじゃないか。」
「どうして? どうして中国人は皆、共産党のことを好かなければならないのか。共産党はそんなに良いのか」
「当たり前だ。当たり前じゃないか。共産党の指導があるから、中国は日本の侵略を防げるんじゃないか。昔、日本侵略軍をやっつけたのは共産党じゃないか。おじさんは歴史を忘れたのか」


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「そうか。やっぱり歴史か。それでは聞く。今から11年前、北京で起きた『6・4事件』(中国では、「天安門事件」のことは普通「6・4事件)という)、あれも歴史だけど、君はどう思うのか」

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「何ですかそれは。『6・4事件』って、あ、思い出した。おじさんたちのやっていたことは、間違っています。党と政府の措置は正しかったと思います。僕だけじゃない。大学では皆、そう思っています」



石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140819 敵が「日本」に代わっただけ 2 

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やはりそういうことだったのか。
私が人生の中で、もっとも嫌悪している、あの毛沢東時代の.人騙しの洗脳教育が、そっくりそのまま、今の中国で繰り返されているのだ。
ラジオがテレビに代わっただけで、糾弾すべき「人民の敵」は、昔の「反革命分子」から今の「日本軍国主義」に代わっただけの話である。


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共産党のやることは、今も昔も変わらないのだ。
今、目の前でやっているこの反日宣伝運動を見ただけでも、その「黒幕」が中国共産党政権であることは一目超然である。
現在の中国で、反日宣伝運動の主題を決めてその台本を書き、さらに学界やマスメディアを総動員して、台本通りにそれを組織的に遂行することができるのは、当然、共産党政権をおいてほかにはない。
長年にわたって、この政権のやることを見てきた私のような人間には、それが分かりすぎるほど分かるのだ。
しかし、しばらくの間、最後まで解けないナゾが一つ残されていた。


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中国共産党政権は一体何のために、これほど長期間にわたって、これほど多くの人間を動員し、これほど手の込んだ方法を用いて、この国家規模の反日教育、宣伝を展開しなければならないのだろうか、ということである。
共産党が救いのないウソつきであること、共産党の宣伝は、例外なく一種の洗脳教育であることは分かりきっている。
しかしウソつきにも、それなりの目的や理由があり、この国家規模の反日宣伝教育運動には、やはり何らかの国家レベルの動機付や思惑があるはずだ。
問題は、それが一体何か、ということである。




石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140813 敵が「日本」に代わっただけ 1 

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実は、「大阪集会」を発端とする、前述の日本批判キャンペーンが展開されている最中に、私はちょうど出張で北京に来ていて、その一部始終を目の当たりにした。
2000年1月のことだったが、その頃になると、1998年あたりから始めた、中国における反日感情の高まりに対する私なりの検証と思考は、そろそろ最後の結論に達していた。
そして北京滞在中は、毎晩ホテルの一室に閉じこもって、昼間に収集した批判キャンペーン展開中の新聞各紙を読み、テレビで放映されているキャンペーン関連のニュース報道や特集番組を果ていた。


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そして、日本批判を盛り上げているテレビの画面を眺めていると、私の脳裏に葬られていたはずの、数十年も前の記憶が蘇ってきた。
思い出しただけでも吐き気を催すような、あの毛沢東時代の記憶である。


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断固とした口調で日本批判をまくし立てるキャスターの顔を見ていると、今から数十年前、学校や家のラジオから毎日のように聞こえてきた、お兄さんやお姉さんが、社会主義祖国を称賛して「帝国主義者」を非難する、あの「懐かしい」声を思い出した。
テレビの画面に登場させられた高校の先生や大学生、公務員や労働者などの人々が、一様に憤慨の表情を示して、「日本軍国主義の復活は断固として許せない」という千篇一律のセリフを口にしている。
文化大革命の時代、「革命的群衆」たちが党の宣伝部に動員され、町の広場に集まって、「反革命分子」を糾弾するための「批判大会」を開く時の、あの集団的発狂の恐ろしい場面が、目の前に浮かんできたわけである。



石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140811  暴風雨のごとき、マスコミの反日キャンペーン 2 

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南京で発行されている『新華日報』となると、「虐殺事件」の地元でもあるが故に、その反日キャンペーンの凄まじさは、目を疑いたくなるほどであった。
1月15日から25日までの11日間に、同紙に登場した関連記事、抗議文、批判論文は全部合わせると、なんと23にものぼるという猛烈ぶりである。
それ以外にも、たとえば人民解放軍の機関紙である『解放軍報』、全国の知識人を主な読者層とする格調の高い『光明日報』、経営者たちにもっとも人気のある『中国経営報』も、もちろんこの反日キャンペーンの展開に全力を挙げている。
普段なら、もっぱら生活と娯楽の情報を取り扱う、上海の『新民晩報』のような庶民的な夕刊紙までが、いきなり真面目な顔をして反日キャンペーンを張り、気勢をあげているのである。


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それらの中には、「日本鬼子が本性を剥き出した」とか、「日本軍国主義の亡霊が蘇った」とか、煽情的な警告を連発するものもあれば、「日本軍国主義者の侵略に備えよう」とか「国外からのいかなる脅威にも対応する準備を整えよう」と呼び掛けるものもある。

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それはもはや、捏造とウソ偽りによる悪意の煽動と完全な情報操作に基づく、洗脳教育の典型であった。
まさに中国のマスメディアは「一致団結」して、このようなとんでもない洗脳教育の推進に、全力を尽くしたのである。


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前述の学者、ジャーナリストたちの「ご著書」による日本論の歪や、この全国規模の反日キャンペーン展開の恐ろしい実態を見ただけでも、中国国民に蔓延している、激しい反日感情の形成の原因、その出所が一体どこにあるのか、もはや火を見るよりも明らかではなかろうか。

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このような感情は、決して自然発生的なものではない。
それは、まさしく組織的な反日教育と、煽動的宣伝が継続的に行われてきた結果として、人工的に作り上げられてものである。
前述の実例からも分かるように、中国の学者・専門家とマスメディアの「共同作業」によって、「悪魔の日本軍国主義」という捏造の観念が国民に植え付けられ、「日本増悪」という激しい憎しみの感情が、多くの中国国民に生み出され、煽り立てられているのである。
これが、真相のすべてなのである。



石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140809 暴風雨のごとき、マスコミの反日キャンペーン 1 

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『北京青年報』のような散発的な新聞報道よりも、中国のマスメディアによる日本批判報道のもっとも得意とするのは、マスメディア総動員による、集中攻撃的な批判キャンペーンである。
それは、たいてい何らかの事件をきっかけに、新聞、テレビを含めた中国全土のマスメディアを総動員し、まったく同じ時期に同じような論調をもって、いっせいに集中攻撃の砲火を浴びせるという、まさに暴風雨がごとき人民裁判式大キャンペーンなのである。


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2000年1月に、日本の民間団体が、大阪で例の「南京大虐殺」の真偽を検証するとして、わずか400人参加の集会を3時間にわたって行った。
それに対して、中国のマスメディアはどのような反応を示したかというと、『人民日報』や中央テレビ局をはじめとする全国の新聞・テレビ・雑誌は、総力を動員し、嵐のような日本批判キャンペーンを半月にもわたって延々と展開したのである。


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もちろん、「大阪集会」に対する批判は、単なる「導入部」にすぎない。
中国のマスメディアはむしろそれを一つの口実にして、ありとあらゆるウソとデタラメを並べて、誹謗中傷の限りを尽くして、この暴風雨のごとき日本総攻撃キャンペーンを思う存分にやり遂げたのである。


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たとえば『人民日報』の場合、「大阪集会」が開かれる1月23日の9日前の1月14日には、すでに批判キャンペーンの先陣を切っていた。
その日から2月28日までの15日間に、実に18もの記事を掲載して、まさに『人民日報』らしくこの全国規模の反日キャンペーンの主導的な役割を果たした。



石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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140805 東京の防災訓練が「軍事演習」に 2 

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さらに言えば、たとえばアメリカでもロシアでもあるいはフランスでも、日本以外の国の軍隊なら、防災のためにどれほど大規模な出動をしたとしても、おそらくこの『北京青年報』も他の中国のメディアも、それを大きなニュースとして報道することはまずない。
誰も問題とは思わないからだ。

どういうわけか、ひとたび日本のこととなると、普通の「防災訓練」が「軍事演習」として取り上げられ、さらに「軍国主義復活の象徴」として大々的に報道されるのである。
この一例から見ても、「日本軍国主義の復活」という事実無根のデマを流布するために、中国のマスメディアがいかに腐心しているかがよく分かるのである。


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特に指摘しておくべき点は、この報道における「軍国主義の復活」という批判がいかにデタラメなものであるか、という点である。
この刺激的な表現が出てきたのは、先述のように引用した記事の「報道概要」であり、「ある(日本人)左翼人士」の言葉として援用されたものである。
しかし奇妙なことに、記事の全文のどこを読んでみても、この「左翼人士」とは一体何者かについて、いっさいの記述がない。
肝心のところで人の話を援用しているのに、その人物にかんする本名も素性も年齢も職業も、いかなる情報も提供されていない。
新聞報道の基本ルールからすれば、まさに信じられないほどのお粗末な話である。


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もちろん、この架空の「左翼人士」の口からは、自衛隊参加の防災訓練がどうして「軍国主義の復活」であるのか、いかなる論証もされていないのである。
この『北京青年報』の報道による「日本軍国主義の復活」というメッセージが、いかにいい加減なものであるかが、よく分かったと思う。


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しかし、まさにこのようないい加減な新聞報道によって、「防災訓練=軍事演習=軍国主義の復活」という短絡的な結論が導かれ、「日本軍國主義はすでに復活している」という偽りのイメージが、多くの読者の頭の中に刻みつけられることになる。


石 平 著 私はなぜ「中国」をすてたのか から抜粋


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