日常非日常

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160329 ほくそ笑む人々 

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「いい人」をやめるつきあいかた

ほくそ笑む人々


自分の親でも子でも兄弟でも配偶者でもない赤の他人が、戦争中に犯したことを謝れと言われても、私にはむずかしい。
もちろん謝れ、と言われれば謝っておいてもいいけれど、謝るというのは本来自発的でなければ意味のない行為だから、強制されて謝っても何の意味もないだろと思う。
それを知りつつあえて謝れというのは、個人なら威張りたい人、イコール弱い人なのではないか、と思う。


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個人の関係の場合、相手に謝らせるくらいなら、こっそり侮蔑していたほうがいい、と私は思う。
しかし国際間の謝罪というものは、本来なら金銭の要求ということである。
それだから、なおのこと謝れない場合が多い。
自分が悪いと思っていても、謝ったら金をとられると思うから払えない場合は謝れないのである。
さらに「国益」という、とにかく自分の国は損をしたくない、という気持ちがあるから、ほとんど謝るということをしない。
その点でも、自国のことを執拗に悪く言う日本の新聞の「公正さ」というものは、人間離れしていて気味が悪い。


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私が謝れない一つの理由は、私がキリスト教徒だからだと思う。
私たちは、本来自分の犯した罪しか謝ることができない。
兄弟でも親子でも夫婦でも、罪は犯した人の罪なのである。
もし代理謝罪が許されるなら、カトリックの罪の告解という行為は成り立たなくなる。


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もちろん近親者が悪いことをすれば、周囲の者は、悲しみ、怒るだろう。
そして代わって償いをしたいとも思うだろう。
しかし犯した行為は当人しか謝ることができない。
世間が謝って当然というが、私はどうしても、この点が納得できないのである。


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曽野綾子著 「いい人」をやめると楽になる 敬友録 から抜萃






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160326 21世紀への手紙 

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愛から離れた親にならないために

21世紀への手紙


誰がその人に教育を行なうか、ということはたいへん興味ある問題である。
なぜなら、世間には教育の責任を転嫁する話題のみあふれていて、それはあまり教育的でない、と思うからである。
教師が悪い、教科書が悪い、教育環境が悪い、親が悪い、と悪いものの話題にはこと欠かない。
しかし教育の責任者の第一は、自分である。
少なくとも、小学校5、6年くらい以降は教育の責任のほとんどは自分にある、と言わねばならない。


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もちろん他の要素もないわけではない。
親にもかなり責任はある。
何しろ親は毎日一緒に暮らしていて、その人間性のすべてを子供に見せているのである。
それよりはるかに少ない程度でなら教師にも責任はある。
社会にもある。
しかし人間にとって、自分の教師は自分なのである。


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もっと幼い子供の場合はどうだろう。
責任のほとんどは教師ではなくて、親にある。
教科書がよくないと思えば、親はその間違いをじっくりと教えればいい。
誰もそのことをさまたげる人は一人もいないのだから。
生きる上で待ち構えている危険の防ぎ方、敬語のつかい方、道具を使う技術、など、こうしたものを教えて来たのは、古来親である。
教師は親の半分くらいの程度でなら責任はあるだろう。
そして教師と同じくらいの軽さでなら、社会にも責任はある。
文部省、学校、なども大切なものではあるが、けっして決定的な影響を個人に与える責任を有するものではない。


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それ故、それらのもののために自分がよく教育されなかったというのは言い訳である。
国家や社会が極度に貧困であり、個人がただ生きることさえ、時と場合によっては不可能だというような時には、弱い個人が自分を失うことの責めを一身に負うこともむずかしいかもしれない。
あるいは時の為政者が強力に個人の思想を統一し、自由な選択を許さない場合、人間は自分の力で自分を伸ばすことは不可能になる。
しかし少なくとも20世紀後半の日本にいては、私たちが自分を教育することを妨げられたという言い訳を一般的に発見することはできない。


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言葉を換えて言えば、教育は誰に任せてもいけない。
それは自分、あるいはみずからの家庭がその責任において最終的に行なうものである。
そして社会がどのような価値観を植えつけようとも、温かく周囲を受け入れつつ、しかし断固としておのれを保つことも、現在程度の自由の中にあっては、誰にとっても不可能ということはできない。


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曽野綾子著 「いい人」をやめると楽になる 敬友録 から抜萃








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